【トークセッション】
栗村 修(J-sports 解説者) × ブラッキー中島

自転車と子どもと地域と、
そういう取り組みへの信任投票のようなもの

栗村 修 KURIMURA Osamu

一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV 局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。
引退後はTV 解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。
著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100 倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など

栗村「屋根の釘の何本かは僕が打ち込んだんです」

栗村
たしか、ブラッキーさんから、美山サイクルステーションを作りたいと思ってるという話をうかがったのは、ちょうど5年ほど前ブラッキーさんが美山の自宅横に宿泊小屋を作ろうとされてた時だと思います。
ブラッキー
そうでした、そうでした(笑)。
栗村
ブラッキーさんが美山で古民家生活を始められてから、僕が宇都宮ブリッツェンの監督してる時にレース前の合宿で一度伺わせていただいたんですよね。自然の中での生活の素晴らしさとか大変さを聞きながら、その時にすでにブラッキーさんは熱く、ここで自転車のいろんな人たちを呼んで美山の環境の素晴らしさを伝えたいんだっていうお話をされてましたね。実は、あの宿泊小屋の屋根の釘の何本かは僕が打ち込んだという。
ブラッキー
そうそう。僕は古民家を購入してリフォームしたんですけど、みんながたくさん集まれるようにと言って、部屋の区切りがほとんどない公民館みたいな作りになってました。だからお客さんが来てもらっても雑魚寝になってしまって非常に申し訳ない状況。そこで、ゲストにゆっくり過ごしてもらえるように隣に宿泊棟を増築したんです。ちょうどそれを自分で建ててる時に栗村さんが選手と合宿に来てくれてね。ほんとにいろいろ働いてもらいました(笑)。申し訳ないというか、トイレ掃除まで一緒にしてくたんですよね。その流れで、僕もなにか手伝いますよ!っていう感じで、建設中だった宿泊小屋の屋根はりまで手伝ってくれはったんですね。だからほんまにあの屋根の釘の何本かは、栗村さんです。
栗村
懐かしいですねぇ。そんな感じでブラッキーさんとはウィーラースクールなどを通じて、いろんなところで顔を合わせたりということも多かったんですが、特に僕自身が昨年からツアー・オブ・ジャパンというレースの主催者側にまわり、もっと大きな取り組みをするところへ自分の居場所を変えてからのこの1年は、本当にブラッキーさんとこれまで以上に関係が近づいたというか、こちらからもいろんなことをお願いするようになったりしています。

今年、ツアー・オブ・ジャパンで「TOJキッズ」というのをやったんですが、国際レースの中で自転車教室をやっていただくというのは、手前味噌ですけど世界でもあまりない画期的なことで、それをブラッキーさんにお願いして実現できたんですね。


2015年から始まったTOJキッズ

会場で子どもとふれあう栗村修氏
そんな中でもこれまであんまりあらたまって伺ったことがないので、これを機にブラッキーさんへ質問なんですが…。ブラッキーさん、そもそもなんでこのウィーラースクールとか、子どもたちと自転車への支援って始めたんでしたっけ?
ブラッキー
もともとは、自分の子どもを自転車乗せたいとか自転車で楽しませたいっていうところから始まってるんです。実はうちの子は小さい頃、ボール遊びも苦手で、ブランコすらまともにこげなかったくらいスポーツ的な事が苦手で。そんな子が自転車乗りたいって言うから買い与えたら、毎日遅くまで公園で思いっきり乗って、本当に楽しそうにしてる。そんなに楽しいんやったら、僕も一緒に乗って楽しまれへんかな、っていうことがきっかけです。そんな中で、実際に子どもが街を自転車で走ると大変なことがいっぱいあったりして…。社会の責任として、そういうことを少しでも改善できへんかな、と思ったんですね。

息子が5歳になると、ワンランク上にになって、公園を飛び出し息子とツーリングに行くようになりました。子どもとツーリングに行くと本当に楽しいんですよ。目の前で自分の子どもがいろんな壁を乗り越えてステップアップしていく姿にいっぱい感動させてもらった。それでこれはちょっと他のおとうさん、おかあさんにも感じてほしいなと思って、「子どもと自転車」に関わる取り組みを始めたんです。当時、サイスポ(月刊サイクルスポーツ誌)で連載したり、いろいろ発信しながら、ちょうど出会ったのが、ウィーラースクールの活動なんですね。最初はただの参加者と保護者だったんですが、それがどんどん深く関わりだして、ある日、とうとう続けられる人がいなくなったウィーラースクールを僕が引き受けることになったんです。

ブラッキー「みんな心の底には、子どもたちのために何かしたいという思いがあったと思うんです」

栗村
そういう、ある意味運命的というか、ご自身の生活の延長上でスクールを始めてからデザイナーであるブラッキーさんのセンスもウィーラースクールのイメージアップにつながって広がって、徐々に形になっていったと思うんですが、日本の今の現状の中で、ウィーラースクールのような子どもの自転車教室がどんどん必要とされていく、評価されてひっぱりだこって感じになっていくのはどうしてか、ブラッキーさんはどう思われますか?
ブラッキー
僕がウィーラースクールにかかわりだしたのは10年前で、本格的に中心になってやりはじめてからおよそ8年になります。でもね、実は当時から国内には多くの自転車教室はあったんですよ。でもそういうスクールはなかなか続かない。続かないと参加者も増えないし、子どもたちがそうしたスクールに参加する手段も見つけられない。とにかく、必要な情報も広がらないから、子ども向けに自転車教室があることもわからないんです。多くの大人にとって、子どもたちに何かしないといけないという思いがあったにしても、まったくそれが社会的に認知されていかない状況があったんです。僕はデザインの仕事をやりながらある程度マーケティングとかセールスプロモーションとかに関わる機会があったので、その視点から見ていると、なんというか、めざす目的と手法がうまくかみ合ってないといんじゃないかという感じがしたんですよ。えらそうかもしれませんが、自転車教室の見せ方にしてもやり方にしても、なんとなくやってる、なんとなく集まってるという感じに見えたんです。


スクールでの楽しそうな様子
だから、それをきちっとコンセプト立てて、筋道と見え方を整理して、どういう時にどういうスクールをやればいいのかというのを考えてパッケージ化したんです。1時間とか1時間半でのスケジュールの中で、ある程度のことをちゃんと伝えられるプログラムを考えました。それはまず安全教育の紙芝居からはじめて、最後に子どもたちが集まって記念撮影するまでのストーリーを考え、ひとまとめにしたパッケージをつくったのは、たぶん僕らのウィーラースクールが最初やと思うんですよ。そして、スクールがどんなことを子どもたちに教えるのか、そのビジョンを明確にした。それが「ひとりでも多くの子どもに、自転車に乗る楽しみを。」というおなじみのスローガンです。そう、つまり僕らのウィーラースクールは、多分はじめて「楽しさ」を明確にうちだしたスクールだったんじゃないかと思うんですよ。こんな感じのイベントにぴったりはまるパターンとか、サイクリングとかレースとか、一日たっぷり外で遊べるとか、そういうニーズに合ったスクールをうまく使い分けてやれたっていうのが、世間にウィーラースクールを認知していただける一番のポイントやったかなと思います。

それとウィーラースクールが人気スクールになったもうひとつの理由はですね、やっぱり大人はみんな、心の底に「子どもたちのために何かしたい」という思いがあったと思うんです。そして多くの人はそれをどう表現していいかわからなかったんですね。たとえばトッププロチームの人たちが子どもたち、次世代に教えたいけどどうしていいかわからない、と思ってた。そういう人たちが飛びついてくれて、これやったら僕らにもできるよな、となったのではないかと。社会的に自転車の利用マナー向上が叫ばれるそういう風潮と相まって、教育のニーズにうまくはまったのかなと思いますね。


国内のトップチームのほとんどがウィーラースクールに協力している

ブラッキー「自転車が悪いんじゃなくて“その人”に問題があるんだから、人の教育をちゃんとしよう」

栗村
たしかに最近は自転車がいろいろな意味で話題になりますね。そんな中、日本における自転車というものがどんどん変わってきていて、先日も改正道交法が施行されたりとか、結局自転車の立ち位置が国としてもしっかり打ち出せていないような現在です。ウィーラースクールも、国が自転車というものをどうするかによって、影響されてくると思うんですけど、自転車のもつ問題とか課題点とか、それをふまえたウィーラースクールの未来とか、はどうでしょう。
ブラッキー
実はここ数年、ウィーラースクールというものの存在意義は、徐々にではありますが自分なりに整理ができてきました。つきつめていくとすごいシンプルなものになっていくんですね。最初は子どもたちに交通ルールとマナーを教えて、あとは技術的な事、例えばとっさの時の回避術なんかを教える流ればかりでした。ルールなんかも、これをしたらダメ、あれはダメっていう感じで、やってはいけないことの羅列だったんです。でも最近では、子どもたちに教えるのは至ってシンプルで、「みんな優しく乗ろう」「道路はみんなで使うもの」ということをしっかり伝えてます。


美山町でのウィーラースクール

様々な場所で積極的に行われている
そしてもっと想像しよう、例えば、こんなんして走ったら危ないんとちゃうかな、こなままやったらあそこの人にぶつかるんとちゃうかな、とか、そういうことをイメージして乗ってほしい。大事なんは、優しく乗る、人のことを考えながら乗るんだよって。

そうなると言ってる内容もどんどんシンプルになってきて、ルールはたくさんあってなんやややこしいし、覚えるのも大変。そやけど、大事なんは、楽しんで乗ったり、余裕をもって乗ったり、そういうことだけで事故が減る。事故が減ると、どんどん楽しく乗れる、そして長いこと乗れる、すると長いこと乗れてどんどん上手くなっていける。子供たちの気持ちの本質に添って、ストレートに伝えるようになってきてるんですよ。

いま、道交法の改正で、自転車が摘発されまくってる!とか、結構みんな大騒ぎしてますよね。僕からしてみたら、前からやったらあかんことを、捕まえる、捕まえへんってことばかりになってるだけで、なんも変わってない。むしろ騒ぐほうがおかしいんじゃないか、と思ってます。実はそうやって騒ぐことによって、子どもたちを含む社会へのネガティブメッセージになって、親からも「自転車は危ないから乗るな」とかなるほうが心配。

昨日もちょっと警察の集まりに呼ばれて行ってきたんですけど、みんな言ってるのは、バイクにも事故は多い、自転車にも事故は多い。お互いに「バイクの奴は危ない」「自転車のほうが危ない」っていう話になるんですけど、自転車やバイクが悪いんじゃなくて、自転車に乗っている「人」が悪いんですね。そういう周りと協調できない人は、自転車に乗っても車に乗ってもバイクに乗っても歩行者になってもムチャクチャなんです(笑)。自転車や、車、バイクが悪いんじゃなくて、“その人”に問題があるんだから、人の教育をちゃんとしよう、と。

その第一歩が、僕はやっぱり自転車やと思うんですよ。自転車は、なんといっても子どもにとって社会と一番通じる交通手段ですしね。子どものうちにきちんと教えておかないと、大人になってから自転車ちゃんと乗れと言うても無理とちゃうかなと、ほんと、いろんな大人を見てそう思います。

栗村「大げさに言えば、今回のプロジェクトは、いちサイクルステーションを美山に作るだけではなくて、この国の地方のデザインを今後どうしていくのかということに対する、ひとつの提言」

栗村
ほんと、おっしゃる通りですよね。そういう気持ちに基づいたウィーラースクールに取り組む一方で、今度は町おこしというか、「地域の振興」というものに取り組まれている。美山という過疎化が懸念されている地域の活性化をめざして、地域と自転車のコラボレーションをめざしておられるわけですが、その視点の移り変わりなのか、もともとお持ちになっててそういうタイミングが来たのか、その辺は何か子ども、スクール、地域というものに接点があったんですかね。
ブラッキー
美山ロードレースという伝統のあるレースに参加して美山が好きになって、ここやったらきっと毎日気持ちよく自転車に乗れるなぁ、と思ってたんです。それで一念発起して引っ越して移住してきました。ほんとは当初、のんびりした生活を考えてました。本業がデザインなので、ちょっと仕事の合間にコーヒーを片手に窓の景色を見ながらほっと一息したりなんかして、身体が動かしたくなったら気分転換にオシャレな犬の散歩なんかして…なんてことを考えてたんですよ(笑)。実際に来てみると、なかなかそうじゃない。田舎生活は結構大変で、おまけに田舎なりにいろんな課題があった。まず僕がびっくりしたのは、田舎が都会の人間が思うよりも、様々な面でかなり疲弊しちゃってることです。その傾向は地方に行けばいくほど深刻です。



さらに、田舎に入って田舎から都会を見てみると、大都市一極集中だったりとか、いかにいろんな価値観が都会中心になってるかという現実を痛感します。 “人としてコミュニティで生きる”という、本来田舎で培われていかなければならないものが、どんどん危うくなってる状況。コミュニティ全体が高齢化して、例えば農業を続けられなくなってきて、草ぼうぼうになった田んぼが増えたり、地域に住む人が少なくなり、人の手が足らなくて、管理されずに道が荒れ果てていったりして、そうなると自転車にとっての優良な環境がなくなっていく。つまりどういうことかというと、サイクリングって道を走ってるだけじゃなくて、道の周りに住む人の生活を背景にして楽しむものなのに、それが維持できない。そんなん、人がいない荒廃した里を走ってもなんもおもしろくないですよ。「日本の原風景」には、そこに人が住み続けていなければならないことを切実に感じたんです。それがまた、日本のどこにでも起こっていることも知ったんですね。

田舎が、都会の人にとっても心のオアシスであり続け、アウトドアフィールドとしての価値を見いだしてもらえるようにするためには、都会の人にもある一定の協力を得ないと田舎は守られないなと痛感したんです。それで、都会からサイクリストを呼び込む努力をして町を活性化させようっていう自転車の聖地プロジェクトを作ったんです。

このプロジェクトはサイクリストに良いことばかりを提供するだけじゃなくて、サイクリスト側にも現状を理解してもらって、自分たちも田舎の一員のようなつもりで、田舎の環境を守る活動に広く薄く協力してもらうことで、みんなが負担を分担しながら町が守られていくようなことにならないかなと考えが基本にあります。その中で僕が、中心軸に据えたのが僕らが長年やっている子ども自転車教室ウィーラースクール。やっぱり、子どもにとっていい環境であるということが、町が長く続いていく基本やと感じたんですよ。ウィーラースクールの基本コンセプトは、何をやるにも、田舎を守っていく上でも、重要なんやと思いましたね。


美山のスクールで子どもたちに農業体験も行っている

美山の環境を活かした体験を子どもたちに提供したい
栗村
お話を聞いてると、大げさかもしれないけど、日本が抱えている問題にリーチされているのかなと思いますね。人口減少、少子化。そして、国も対策をうつと言ってますけど、地域経済のシュリンクですよね。だから、ブラッキーさんが取り組まれているのは、本当は国がやらなきゃいけないところを草の根活動的にやられている、という感じでしょうか。今回の美山自転車の聖地プロジェクトの計画というのは、いちサイクルステーションを美山に作るということだけではなくて、この国の地方のデザインを今後どうしていくのかということに対する、ひとつの提言になるのかな、と思いますね。

ブラッキー「他の地域の人たちが私らもと思ってもらえたら、他の地域でもどんどんやってもらいたいし、そのためのひとつの成功例にしたい」

ブラッキー
ものすごい大きな話になっちゃいましたね(笑)。僕自身はもっとシンプルですよ。なぜ僕が美山町にこういうものを作りたいか、それはある意味、近所のおっさんとしてやらなければいけないことをやろう、住民の責任として町のことを考えようって思ったからなんです。



例えばウィーラースクールについても、大きな組織を作ったり、行政に強く支援をお願いしたりしないのは、子どもを安全に自転車に乗せることくらい、そんなんは近所のおっさんの責任、親の責任やろ、と思ってます。だから大きな組織じゃないとそれができない、というような風潮は作りたくないんです。

今回のこのプロジェクトに関しても、もちろんそういうマクロな視点で何かを投げかけられるものになったらいいとも思ってますけど、もっとシンプルに考えて、もし他の地域の人たちが僕らがやることを見て、これはおもしろいな、なんかいけるんじゃないの、などと思ってもらえるのであれば、他の地域でもどんどんやってもらいたいし、そのためのひとつの見本というか成功例にしたいなぁと思ってます。

そしてもうひとつ。実はこのサイクルステーションも、近所の子どもたちが気軽に集う場になってほしいとも思ってるんですよ。なんでそう思ったかというと、僕はウィーラースクールで全国のいろんなところにお邪魔してますよね、以前奥四万十に行った時に、町にカヌー館という施設とレストランみたいなのがあって、そこで打ち合わせしてたら、近所の子どもたちが学校帰りにぞくぞく集まってきて、レストランのテーブルに座ってめいめい宿題を始めたんです。店のおばちゃんらが、子どもらにお茶だしてあげたりしてね。僕、こういうのがいいなと思ったんですよね。たとえば地域の子どもたちが学校帰りにサイクルステーションに気軽に遊びに来る。そこには格好良い自転車とかいっぱい置いてあったり、サイクリストもいっぱいやってくるから、もしかしたら子どもたちは自転車に興味を持ってくれたり、乗ったり、メカニックなんも体験したりする。自転車を使った子どもたちの社交場のようなものです。そしてその後も自転車に乗ることに興味を持ち続けてくれたらそれこそ嬉しいし、やって良かったなって思うだろうなと思います。僕の根底にあるのは、5歳の息子を自転車で金剛山越えさせた時の感動のままですね。あれをみんなともう一度共有したいんですよ。

栗村「クラウドファンディングは、みなさんの想いと支持が形になるシステム。これってある意味、僕らがやろうとしていることに対して社会の信任投票を問うてるようなものだ」

栗村
ブラッキーさんはほんとにまっすぐで、いい意味で少年が大人になった感じですよね。僕も人のことは言えないですけど(笑)。そういう純粋な想いが根底にある一方で、やっぱり今回、大げさな表現と言われようと、栗村なりにみなさんにお伝えしたいのは、やっぱりブラッキーさんが挑まれていることは、マクロな意味で日本全体が持ってる課題にリーチしてる部分だな、と言うことです。ブラッキーさんご自身は、そんな複雑で大それたことじゃないんだよっておっしゃってるんですが(笑)。

僕はいま、「レース」というものを新しいビジネスモデルにのせていくことに取り組んでいるわけですが、その中でも地域との融合の必要性はとても強く感じています。また、日本のレースの未来という意味では子どもたちにレースをもっと知ってもらいたいし、スポーツとして取り組んでもらうこともすごく大事です。「地域と子ども」っていうのは、レース現場的にも重要なキーワードなんですね。

名前はブラッキーですけど純白な心を持つブラッキーさんに(笑)、牽引してもらいながらこの活動が広がっていかないと、僕も僕の夢に届かない。僕は今回初めてクラウドファンディングのしくみを詳しく知ったんですが、とてもわかりやすくて、みなさんの想いと支持が形になるシステムだと思うんです。これってある意味、僕らがやろうとしていることに対して社会の信任投票のようなものだなと。
ブラッキー
ほんとにそうですね。社会に認められ、求められるかどうか。行政の補助金と確実に違うのがそこやと思うんですよ。社会に認められなければ完遂できない。
栗村
そういう意味でもこれを見てくださるみなさんに、ちょっとしたプレッシャーをかけたいという下心も含めて、これは日本の社会をどうするかとか、その中で自転車というものをどうしていくのかとみなさんに問いかける、信任投票のようなものだと言い切りましょう。ブラッキーさんが今回やろうとしていることや、僕らが取り組んでいることが、はたして必要とされているのかどうかを、問うてるということです。自転車が好きな人とか、地域のことを考えている人たちにとっても、この成否は非常に気になるところだと思いますね。クラウドファンディングっていうのは、期間内にちゃんと寄付金が集まらないとプロジェクトが成就しないし、支援金も決済されないんですね。

これ、支援額の一番小さい単位は3,000円でしたっけ? 今日時点で、目標額まであと300万円ほどですが、3,000円があと1,000人分集まったら300万円ですよ。3,000円でいいんだよっていうところで、清き一票、賛同してもらえたら嬉しいです。
ブラッキー

応援メッセージ
あと300万円集めるのに、100万円出してくださる方が3人いてくださったら、それはもう本当にありがたいし、それでプロジェクトは達成するんですけど、もし3,000円出してくれる人が1,000人集まってくれたら、それは資金集めというだけじゃなく、すでにその時点で1,000人もの人が自分たちのやろうとしてることを理解して応援してくれてるということでもあるんですよね。そういう意味でクラウドファンディングってすごいシステムなんやと実感してます。

しかも、支援くださった皆さんから応援してもらえることで、また明日も頑張れる気持ちになるんですよ、ほんまに(笑)。たまにほんとに「つらくてつらくて」っていう時があるんですが、そんな時に支援してくださった方々のあの応援メッセージはマジで感動しますよ。
栗村
ブラッキーさんも僕も信念は持ってるけど、やっぱり常に不安と戦ってますもんね。ブラッキーさんって特に苦労を見せないキャラだから、見てる人はあんまり感じないかもしれないですけど、やっぱりこういう前例のないことをやるときって、自分がやってることが果たしてあってるのかどうか、支持されるものなのかどうかっていう不安から逃れられない。僕もいつもそれを感じてて、だからこそ、クラウドファンディングでの支援って、金額を超えた「一票」だと思います。その「一票」がすごく大事なんですよね。ミニマムの金額は3,000円なんで、飲み会を一回我慢してもらえたら、割り勘くらいの金額ですので、そこはぜひ、自ら茨(いばら)の道を突き進むブラッキーさんへの応援と賛同と思って、みなさんの「清き一票」を呼びかけたいです。

ブラッキー「多くの支援者と一緒にやることで「ハコ」の中に何がいれられるか、そこに魂をどう入れていくかに意味をもたせられる。」

ブラッキー
たとえば僕が資金を潤沢に持ってたら、自分一人で建ててると思うんですけど、そうやって建てたものと、今回こういう多くの人の支援を集めて建てようとしているものって、全然違うと思うんですね。こうやって支援を呼びかけていろんな人が気にとめてくださったことで、すでにこの「ハコ」の中に入ってくるコンテンツとかめざすものとかビジョンが、そう、このプロジェクトの成否を気にしてる美山の人たちとか、自転車に関わる人たちにも共有されていくと思うんですよ。「ハコ」の中に何がいれられるか、そこに魂をどう入れていくかということを、多くの支援者と一緒にやることで意味をもたせられると思うんですね。

そして、こういう風にやれば、こんなにも手作りで温かく意味や思いのある「ハコ」ができるんだという前例が示せれば、えらそうに言えば日本の中で同じようにがんばってる地域に勇気づけられるかもしれないし、自転車が基軸になってそれができたら、それこそこの上ない幸せですよね。栗村さんのされているツアー・オブ・ジャパンも、言ったら大きな「ハコ」ですよね。そこにどんな魂をこめたメッセージを入れて発信できるかということにも、通じてくるとこと思います。
栗村
みなさんの「清き一票」どうしても集めたいですねー。
ブラッキー
でもね、これ、資金が集まってからも大変ですわ。また一生懸命大工仕事せんとあかん。栗村さんまたトンカンしに来てね。新たな引換券として栗村さんと一緒に屋根を張る券とかいれましょうか(笑)。いまね、一番高い引換券は、栗村さんと一緒にサイクルステーションでやるキャンプの参加優待が入ってるじゃないですか。これね、栗村さんが解説しない日のツール・ド・フランスをその施設でみんなで一緒に観るとかどうかな。
栗村
それはまた、マニアックな。
ブラッキー
ほんで、その日の解説の人がちゃんとしゃべってるかどうかを、栗村さんがダメだしするとか(笑)。
栗村
いわゆる、副音声みたいなもんですね。
ブラッキー
みんなで寝袋に入ってね。
栗村
そういう楽しいのがいっぱい入ってくるといいですね。
ブラッキー
やっぱりね、そういう遊び心がないとあかんと思ってるんですよ。遊び心でいうと宇都宮ブリッツェン(※)がやってたようにね。黎明期のブリッツェンって、しんどいことも全部遊びにして楽しんでしまえ、というスタンスでスタッフが盛り上がってましたし。そういう雰囲気が徹底してる。深刻な顔してやってても楽しいものにならないと思うんで、こうやってお金を集めてる間も、建てることができたら建てる時も、ニコニコしながらやっていきたいんですわ。

※宇都宮ブリッツェン:地元密着型として成功した日本の自転車プロロードレースチーム。栗村氏はこのチームの前監督であり、ブラッキー中島は現ゼネラルマネージャーの廣瀬佳正氏をサポートしてチームの立ち上げに深く関わっていた経歴がある。

2015年6月7日収録

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